平成20年3月
横浜国立大学大学院
国際社会科学研究科博士課程前期修了
古閑 次郎

スペインの不動産登記制度の概要と不動産物権に関する考察

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(論文の要旨)

 本論文の目的は、スペインの不動産登記制度の概要を紹介するともに、不動産取引の安全のためにスペインで取り入れられている制度(特に、不動産取引における公証人の役割、公署証書の役割、登記の公示性・公信力)について紹介・考察し、更に、不動産登記と密接な関係を有する不動産物権について、その種類・機能・変動の態様・登記との関係などを紹介・考察することにある。

スペインの不動産登記制度は、我が国と同じく不動産毎に登記用紙をおこす物的編成主義を採用し、原則として権原(証書)の登記である。スペインの不動産登記制度と我が国のそれとの大きな違いは、スペインでは(善意と有償名義での取得の場合)登記に公信力があることである。登記の公信力の享受に善意と有償名義での取得という厳格な条件が付されているのは、登記を信じ対価を払って所有権/物権を取得した者を取引の安全・円滑のため保護する必要があるからである。そのためには登記は真実の実体関係を反映する必要があり、誤った登記がなされることを極力防ぐ必要がある。そのために、スペインでは原則的に登記をするには公証人が作成した公正証書によらなくてはならず、また、実体と異なる登記がなされないように登記吏と公証人との協動関係が強化されている。

スペインの登記制度の大きな特色の一つは、その主要な役割を担う登記吏が競争試験により選抜され、国または地方公共団体から報酬を得るのではなく登記手数料から報酬を得て、その事務所の運営に直接責任を持っていることである。また、公証人が不動産取引に深く関っていることもスペインでの大きな特色である。

物権の変動については我が国の場合は、その母法たるフランス民法にならって意思主義を採用している。しかし、スペインでは、ローマ法のtitulus-modus(権原―様式)の理論を引きずって売買・交換などの正権原と引渡しという方式が必要である。一方、ドイツでは不動産物権の変動には登記が必要である。スペイン民法典には物権法定主義の明文の規定がないので、物権法定主義かどうかについて議論があり、紹介した。また、本論文では、物権の時効取得、時効取得と登記の関係、不動産売買における課題についても紹介・考察している。

 詳しくは、下記をご参照ください。全て、PDFファイルです。

誤っている部分もあると思いますので、ご指摘いただけましたら幸いです。

修士論文
目次
第1章 不動産登記制度の概要
第2章 所有権登記所の機能
第3章 不動産登記における公証人の役割
第4章 スペイン物権法の概要
まえがき