第Ⅱ編 (ローマ法の)法律原論(INSTITUTA) 

第Ⅰ章 物の分類

12 このように、野生の四足獣、鳥類および魚類、つまり、地上、海中および空中で生まれる動物全ては、誰かに捕獲される時点で、万民法(derecho de gentes)によりその者の所有となる。つまり、以前に誰の所有でないものは、自然の道理によりそれを占拠(ocupar)する者に与えられる。そして、野生四足獣および鳥類を自己の土地または他人の土地で捕獲することは重要ではない:更に、実を言えば、狩猟または鳥を捕獲するために他人の土地に入る者を、所有者は、見つけると、入ることを禁止することができる。これらの動物のうち貴方が採取した物は、貴方の保護の下にある間は、貴方のものであると考えられる;しかし、保護から逃げたとき、および、自由を回復したときは、貴方のものではなくなり、占拠する者の所有と改めてなる。そして、貴方の視界から逃げたとき、または、貴方の面前にいても、追う事が困難なときは、自由を回復したと考えられる。

13 野生の四足獣が、捕獲され得るほど、傷を負っているときは、すぐに貴方のものとなるかどうか自問されている。或る者たちには、直ちに貴方のものなると思われ、また、追っている間は貴方のものであると考えられると思われた;但し、追うのを止めると、貴方のものではなくなり、新たに占拠する者のものとなると思われた。他の者たちは、貴方が採取した場合でないと、貴方のものとはならなかったと考えた。貴方が四足獣を捕らえるには多くのことが起こるのが常なので、我々は後者の意見を認める。

15 孔雀(pavo real)と鳩の性質は野生であり、習慣的に飛んで去来することは重要でない;なぜなら、蜂も同じことをなし、その性質が野生であることは確かである。或る者たちは、森林へ行き、帰る習慣のある、そのように家畜化された鹿を所有している;その性質は野生であることを誰も否定しない。習慣的に去って、戻るのが常であるこれらの動物については、戻る意思がある間は貴方のものであると解されると言う、この規則が設定された:なぜならば、戻る意思を失くした場合は、また、貴方のものであることを止め、占拠者のものとなる。更に、戻る習慣を放棄したときは、戻る意思を失ったと解される。

16 鶏と鵞鳥(ánsar)の性質は野生ではない。我々が野生と呼ぶ他の鶏、また、我々が野生と言う他の鵞鳥が存在することからそれを知ることができる;このように、あることで驚かされた貴方の鵞鳥または鶏が飛んで逃げた場合に、たとえ貴方の視界から消えても、それらがどこに居ても、貴方のものであると考えられ、利益目的でそれらを保持している者は盗みを働いたと解される。

19 同様に、貴方の所有に服する動物から生まれたものは、同じ法により貴方が取得する。
第Ⅳ編 (ローマ法の)法律原論(INSTITUTA) 

第Ⅸ章 ある四足獣が損害を発生させたと言われる場合

 理性を欠く動物に関して、それらが淫奔、血気または凶暴性により損害を発生させた場合、損害賠償請求権(acción noxal)12表法により設定された;その者の動物は、贖金(noxa)として引渡された場合、被告をそれから解放するのに役立つ、なぜならば、12表法にはそう書かれているからである;例えば、蹴り癖のある馬がある者を蹴って傷つけた場合、または、襲う習慣がある牡牛が角で突く場合のように。更に、この請求権は、その性質に反して行動する動物に生じる;なぜなら、凶暴性が先天性であった場合、それはそれとして(請求権は)止む。最後に、ある熊がその所有者から逃げ、損害を与えた場合、前に所有者であった者は被告とはならない。なぜなら、その猛獣が逃げた後すぐに、その所有者ではなくなったからである。更に、四足獣が加えた損害(pauperies)は不法行為無しに生じた損害である;なぜなら、理性を欠いているので、動物は不法行為をなしたと言う事はできない。これは損害賠償請求権(acción noxal)に関する点ある。

1. それはそれとして、(古ローマの)高官造営司(edil)の布告で、我々が犬、種豚、猪、熊またはライオンを道路となっているところで所有することは禁じられていることを知らなければならない;何かでこれに違反した場合は、また、自由市民に損害が生じたと言われた場合は、所有者には裁判官に充分かつ妥当と思える額が課される;その他の場合では、生じた損害額の2倍が課される。しかし、これらの告示訴権(acciones edilicias)以外に、また、四足獣加害損害訴権が生じる;なぜなら、主として刑法であるが、複数の訴権が同じ客体に競合するとき、ある訴権は他の訴権を消滅させることはない。

XI編 ローマ法典(DIGESTO

1章 古ローマの高官造営司の告示、売買契約の取消し、および、代金減額訴権

40. Ulpiano古ローマの高官造営司(edil curul)の告示についての注釈、第Ⅱ編。なぜなら、これらは別に分けられてはならないから。

 1. その後、高官造営司は言う:“何人も犬、種豚または小型の猪、狼、熊、豹、ライオンを所有してはならない”、

41. Paulo古ローマの高官造営司(edil curul)の告示についての注釈、第Ⅱ編。そして一般に:“または、害をなした、いかなる他の動物、あるいは解き放たれている、また、あるいは繋がれている、もし、それらが害を生じないそのように束縛され得なかったら。

42.  古ローマの高官造営司(edil curul)の告示についての注釈、第Ⅱ編。“または、一般に道路となるところで、何人かに害をもたらし得る、または、損害を引起し得る動物を所有することを欲する。これに反して行動し、そして、その結果としてある自由市民が死亡した場合、200sueldos(昔の貨幣の一種)が支払われる。また、自由市民に損害が生じたと言われた場合は、裁判官が充分かつ妥当と思う額が課される。その他の場合では、引き起された、または、なされた損害額の2倍が課される

XII編 ローマ法典(DIGESTO

1章 利息、果実、訴因(causas)、全請求権、遅延

26. GaiusMinicioの学説第Ⅵ編―狩猟動物は、土地の果実が狩猟動物でない限り、土地の果実ではないと言った。

XXXIII編 ローマ法典(DIGESTO

7章 従物(cosa provista)または用具の遺贈

10. Ulpiano; Sabinoについての注釈、第XX―蜂蜜から収入が得られることが明らかである場合は、巣箱と蜂が含まれる。

11. JavolenoCassioの学説、第II。海の諸島で給餌される、鳥類に関して同じ道理が存する。 

12. その場所(campo)に狩猟者がいた場合、狩猟者、勢子、犬、その他の狩猟に必要な物は、その場所が主に狩猟から収入を得た場合、仕事道具(apero)の中に含まれると私は考える。

13. 鳥類の狩猟から収入があった場合、狩猟者、網およびこのための道具はその場所の仕事道具の中に含まれるであろう;不思議がるべきではない、なぜなら、SabinoCassioは、鳥類もまた蜂と同様に仕事道具の中に含まれると考えていた。

22. Paulo;判決、第III。ある土地が遺贈された:“そのように良く、大きい”、猪用の網、その他の狩猟道具が含まれる;それらは、土地の利用がその大半で狩猟である場合は、また仕事道具に属する。

XLI編 ローマ法典(DIGESTO

1章 物の所有権の取得

1. このように、地上、海中または空中で捕獲される全ての動物、つまり、野生獣、鳥類、魚類はそれらを捕獲する者のものとなる。

2. Florentinoローマ法律原論(INSTITUTA)、第VI。または、我々の支配下でそれらから生まれるものたち。

3. GayoDiario、第II。更に、何人のものでない物はそれを占拠する者に自然の道理で与えられる。

 1. 野生獣および鳥類に関しては、自己の土地または他人の土地で捕獲することは重要でない。更に、野獣または鳥類を狩猟するために他人の土地に入る者を、(土地)所有者は、見つけると、権利でもって入ることを禁止することができる。

 2.  我々が捕獲したこれら動物のいずれも、我々の保護に服している間は我々のものと考えられる;しかし、我々の保護から逃げて、その自然の自由を獲得したときは、我々のものではなくなり、再び占拠する者のものとなる。

4. Florentinoローマ法律原論(INSTITUTA)、第VI編。馴らされた動物が、去り、そして、戻るように習慣付けられていない限り。

5. GayoDiario、第II編。更に、我々の視界から消えたとき、または、そのように我々の面前にいるがそれを追う事が困難なときは、自然の自由を獲得すると解される。

 1. 捕獲され得る程度に傷を負っている野生動物は直ぐに我々のものであると解される場合、疑問があった。Trebacioには、直ぐに我々のものとなったと思えた。また、我々がそれを追っている間は、我々のものと考えられると思えた。しかし、追うことを止めると、我々のものではなくなって、占拠した者のものと、その順番に当って、なったと思えた。このように、我々が追っている間に他人が利得目的でそれを捕獲した場合は、我々から盗んだと考えられる。しかし、更に、我々が捕獲した場合を除いて、そうでなければ我々のものでなかったと彼らは考えた、なぜなら、我々がそれを捕獲しないために多くの事が起こりうるからである;このことはさらに真実である。

 2. また、蜂の性質は野生である;このように、我々の木にとまった蜂たちは、我々が蜂箱に閉じ込める前は、我々の木に巣をかけた鳥とは異なって、我々のものではないと解される;よって、他人がそれらを収容したら、それらの所有者となる。

 3. また、盗みを働くことなく、誰もが、蜂の巣を、蜂たちがそれらを作った場合、占有することができる。しかし、前に述べたように、他人の土地に入る者を、(土地)所有者は、見つけると、権利でもって入ることを禁止することができる。

 4. 我々の巣箱から飛び去った群蜂は、我々の視界の中にあり、それを追う事が困難でない間は、我々のものであると解される。そうでないと、占拠する者のものとなる。

 5. 孔雀と鳩の性質は野生である;習慣的に去り、戻るのが常であることは気にならない;なぜなら、その性質が野生であることが明らかな蜂がその同じことをするからである。また、ある者たちは、森林に行って戻る、馴らされた鹿を所有しているが、誰もその性質が野生であることを否定しない。更に、習慣的に去り、戻るのが常である動物に関して、戻る本能がある間は、我々のものであると解される、そのような規則が受入れられた。なぜなら、戻る本能を持つことを止めた場合は、我々のものであることを止め、占拠する者のものとなるからである;しかし、戻る習慣を失ったときは、戻る本能を持つことを止めたと解される。

 6. 鶏と鵞鳥(ánsar)の性質は野生ではない;なぜなら、他の野生の鶏と鵞鳥が存在することが知れているからである。このように、あることで驚かされた我々の鵞鳥または鶏がどこにいるか分からないほど遠くへ飛んで逃げた場合でも、それらは、しかしながら、我々の支配下に保留されている。この事由により、利益目的でそれらを捕獲した者は盗みの責を我々に負っている。

6. Florentinoローマ法律原論(INSTITUTA)、第VI。また、同じ権利でもって我々の支配に服する動物から生まれた動物も。

55. PróculoEpistolas(新約聖書の使徒書簡)第II。ある猪が、貴方が狩猟用に置いた罠に落ちた;そこにある間に、私がそれをほどいて、持ち去った;¿私が貴方の猪を奪ったと考えられるか?¿また、貴方のものであったと考えるとして、私がそれを森林に解き放した場合、この場合貴方のものであることを止めたか、または、貴方に属し続けるか?そして、私は問う、貴方のものでなくなった場合、貴方は私にどんな請求権を有するか、または、万一その行為により訴訟提起しなければならないであろうか?

(彼は)答えた:私が公共の場所に罠を置いたことと、または、私的場所に罠を置いたことの間に差異があるか検討しよう;また、私的場所に私が置いた場合、私の場所であった場合、または、他人の場所の場合;また、他人の場所の場合、土地所有者の許可を得て置いた場合、許可なしで置いた場合;これ以外に、猪が自身で解き放すことができないような形で罠にかかっていた場合、または、長くもがいて、解け放されるべきであった場合。しかし、私の意見では、最終的結論は、私の支配に至った場合、私のものとなる、しかし、貴方が私の野生の猪を自然の自由に置いて、私のものでなくなった場合は、ある者が船から他人のコップを投げ捨てたときに応じられたように、私はその行為に対して訴訟を提起しなければならない。

2章 如何にして占有を取得し、喪失するか。

1. そして、子であるNervaは、物の所有権は自然な占有により開始した、と言い、また、これから地上、海中および空中で捕獲される物に痕跡が残ると言う;なぜなら、それらは、最初に占有した者のものに即座になるからである。同様に、戦争で獲得された物、海に形成された島、海岸で発見された真珠、貴石および宝貝(margarita)は、最初にその占有を得た者のものとなる。

14. また、我々が飼育場に閉じ込めた野生動物、および、養魚池(piscine)に投げ入れた魚は我々により占有される。更に、ある用水池(estanque)に居る魚や、囲まれた森林をさ迷う野生動物は我々により占有されてはいない。なぜなら、それらはその自然の自由に置かれているからである。別の事情として、ある者が森林を買った場合は、全ての野生動物を占有したように見えるが、これは虚偽である。

15. (我々が)閉じ込めた鳥、または、我々の保護に服する、馴らされた鳥を我々は占有する。

16. 我々の建物から飛び立つ鳩は我々により占有されると、ある者たちは合理的に判断する。また、習慣的に我々の巣箱から飛び立ち、戻る蜂も同様である。

 

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翻訳 司法書士 古閑次郎(横浜市)

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